月ときなこと宝塚

宝塚は幸せの歌

思い出し『応天の門』②

 宝塚はどんどん次へ進んでいるのに、今日も『応天の門』を思い出す私です。

 前に月城さんが『グレート・ギャツビー』の千秋楽で、「役と離れがたい」的なことを言っていましたが、観客としても離れがたい公演・役というのはあるんだな…と。

 それと、千秋楽では主役級の人に限らずみんなが各自の役とお別れしているのだな、と配信を見ながら思いました。公演中は忙しいだろうし、今回は退団者を送り出すぞ…というのが強かったかもしれませんが、全部が終わってふと一人になったとき、もう二度と(おそらく)演じることのない自分の役とお別れをしたりするんだろうか?などと考えます。

 でも、それから一週間くらいで次の公演の集合日があって、また次の役に集中するのだから、ジェンヌさんは本当にすごいスケジュールで生きているんですね。と同時に、いろんな人物と出会ってその人として生きて…という営みを繰り返すのは、ものすごいエネルギーを使う仕事だろうなと。その間に技術的なもろもろの練習もして…と、お稽古の様子を想像しただけでも圧倒される思いです。

 と思いをはせつつ、懲りずに『応天の門』千秋楽を思い出すことにします。

菅原家の人々
  • 吉祥丸・瑠皇りあさん 少年らしい声。歌も素晴らしかった。この人ならいつまでも心から消えないだろうな…と。瑠皇さんのいろんな役も見てみたいです。
  • 阿呼・一乃凜さん 子供そのものの声に驚く。吉祥丸大好きが伝わってきて、回想後に道真を見る(私の)目が変わりました。
  • 手古・白河りりさん 吉祥丸への興味と、才と強がりの混ざった声が好き。

 それにしても、みんな吉祥丸が大好き。ある意味最大の才能かもしれません。

  • 是善・佳城葵さん 屋敷に業平と昭姫が来たとき、桂木に「酒をお出ししなさい」と言うのを見て、つい冒頭の酔っ払い姿を思い出して心配してしまった。
  • 桂木・梨花ますみさん 道真の世話を焼く姿を見て、つい『ダル・レークの恋』の月城さん挨拶を思い出してしまった(雪組時代からおしりをたたいていただいて…)。みとさんの声が落ち着きます。冒頭のナレーションもプロ。
  • 白梅・彩みちるさん まさに漫画から抜け出したような。鬼を捕まえようソングでの思い切った動きや、立ち回りで道真に刀を持たされるところも楽しい。
  • 長谷雄・彩海せらさん ちゃっかり者の彩海さんが新鮮でした。配信で立ち回りシーンがよく映っていて、大活躍が面白楽しかった(菅家の人ではありませんが、なじんでそうなのでここで…)。

 他のシーンが気の抜けない重いところが多いので、菅家のシーンはホッとします。ホッとしすぎて色んな関係ないことまで思い出してしまってすみません。

昭姫の店の人々

 娘役さんがいっぱいで華やかな昭姫のお店。実は2階席から観劇したとき、舞台の両端の何もない黒い空間が意外と目立って、暗く見えたのが少し残念だったのですが、まあ、その分娘役さんたちの色とりどりの衣装が美しかったのでいいか…と。

 配信では、話している道真たちの後ろにいる彼女たちの姿がけっこう映っていて、個人的に楽しかったです。ヨリ・白河りりさんフキ・きよら羽龍さんがつづらを開けて中をのぞいていたり、きよらさん?がつづらを頭に乗せて棚に上げていたり。あと、髪型をアップで見られたのもうれしくて、人によって、降ろし髪風、おかっぱ風、ハーフアップ風、結い上げ…などなど皆さんに合っていて素敵でした。

 そういえば、「歌劇」5月号の春海ゆうさん組レポには、お店の人々の個性が細かく載っています。どう読むんだろう?と思っていた役名の読み方もあるのがうれしく。芸名由来の役名っていいですね。ヨリ、フキ、三好・羽音みかさんの3人が日本人で、他のスタッフは唐から来た模様。個性もさまざまで、例えば杏香(きょうか)・花時舞香さんの設定は、恋に憧れるお年頃で「1番の推しは…」というのまで載っているのが楽しいです。こうやって役作りをしているんですね。これを踏まえて舞台を見てみたかった気も。

 組レポにはお店メンバーの集合写真があるのですが、大拙・大楠てらさんはここでもあの仏頂面を貫いているのがさすが。桶と柄杓を持って、少しぎこちなく真顔で踊っていた姿が思い出されます。

 最後に、昭姫のお店に来た大師・結愛かれんさんが艶やかで素敵でした。スカステ(ぽっぷあっぷTime)で光月さんが、出番前に舞台裏で会うと「こんばんは、お兄さん」と声を掛けてくる (笑) と言っていて、聞いたことないのに勝手に脳内で再生されます。迦楼羅の舞は美しく、力強くて大きくて、白い大きな袖が翻ると時空が動くような不思議な感じがしたのを思い出します。数年ぶりの観劇でしたが、結愛さんの宝塚時代最後の舞台に間に合って本当によかった。

 

 他にもいろんな方がいろんな場面で活躍しておられましたが、私の記憶(とメモ)はここまでが限界のようです。観劇の解像度が上がるともっと楽しいだろうな…と、久々の観劇で思いました。それにしても、宝塚は観劇すると幸せになるし、映像で見ても楽しいし、こうして思い出すだけでも幸せを再生できて…宝塚っていいですね(何度目)。