月ときなこと宝塚

宝塚は幸せの歌

思い出し『応天の門』③月組千秋楽

 思い出し『応天の門』の最後に、月組退団者の皆さんについて思ったことを。

 私はライトなファンで、退団者の方々を生で見たのは『応天の門』『Deep Sea』が最初で最後でした。もっと早く見たかったような、最後だけでも見られて幸運だったような。私が語れることはあまりありませんが、千秋楽配信で見た皆さんの挨拶(白雪さんの温かな退団者紹介と、その後の月城さんとのお話も)がとても胸に響いたので、書いておきたいと思います。

 

蘭世恵翔さん

 名前を呼ばれたときの凜とした「はい」から素敵だった蘭世さん。宝塚という夢からさめる時が来た、と言っていたのが印象的でした。夢を叶えるということについて語る言葉が、きっと夢と現実の葛藤を経てこられたんだろうなと感じられて。でも「愛する宝塚が、これからも夢を叶え続ける場所でありますように」と締めくくる強さにも感動しました。挨拶が気丈な感じだった分、最後のForever Takarazukaの時点で泣いてしまって、お化粧がにじんで黒い涙になっていた姿に、一気にもらい泣きしました。あとで月城さんが言っていたとおり、泣けてよかったね…という気持ちに。後日タカラヅカ・ニュースで放送されたロビーでの挨拶は清々しい表情で、心から前途を応援しました。

 

花時舞香さん

 「はい」のお返事が、私が思う月娘そのものだった花時さん。黄色のお花がよく似合います。憧れ続けた宝塚の舞台に立っていることが「奇跡のような、夢のような、でも確かに、花時舞香はこの舞台で生き続けることができました」と。終始地に足付いた挨拶で、努力して努力して、手応えのある時間を過ごされたんだろうと思いました。

 宝塚がいつまでも我が心の故郷でありますように…と祈る言葉、そして後で客席に、これからは月組を一緒に応援しましょう!と言う明るさと強さが素敵です(月城さんからの返しで泣いちゃったけれど)。あと、「応援してんね!」と言う月城さんの飾らない言葉もいいな、と。トップスターと下級生娘役が手を伸ばしてぽんぽんとタッチするというのも、舞台ではあまり見ない気がします。月組の雰囲気の良さが感じられる、とても素敵な光景でした。

 

結愛かれんさん

 落ち着いた声と、素直な言葉が心に染みた結愛さん。ブーケも、セピアがかった思い出色?のような素敵なバラでした(その後、お花を担当した「らんすいえん」さんのインスタを見ると、あれは「テラコッタ色」というんですね)。

 宝塚を愛する観客が集まり、宝塚が大好きな自分たちが自分を表現する、憧れの詰まった劇場の景色が大好きであること。そこで出会った、心から大切にしたい人々(上級生、同期、下級生、ファン…)への感謝。退団の挨拶の定番ともいえる内容が、あふれる感情と内実を伴って私にも迫ってきました。

 結愛さんが涙で言葉に詰まったときに観客から拍手が起こっていて、劇場という空間の温かさを、私は自宅から配信を見ながら改めて思いました。これについては結愛さんもあとで、月城さんたちとの退団者タイムで触れていました。そして最後は「れいこさん、大好きー!」 。これが月城さんも言ってた「俺たちのゆい」の魅力だろうし、この飾らなさが、私にとって月組の大きな魅力です。

 

清華蘭さん

 緑のリボンを髪に付けて登場した清華さん。本当に娘役を愛していたんだなというのが、挨拶をとおしても伝わってきました。客席から見る宝塚も大好きだったけれど、入団したからこそ見られた、袖から見る舞台、ともに舞台へ向かう仲間の背中…そういう景色も大好きだったという言葉が印象的です。千秋楽の日、清華さんはどういう思いでその背中を見ていたんだろうと思うと、月組の皆さんが袖から舞台へ向かう姿、そして最後の舞台へ走り出す清華さんの後ろ姿を勝手に想像してしまい、胸がいっぱいになりました。

 月娘として生きられて最高に幸せだった…と最後まで明るくハキハキ挨拶していた清華さんが、あとの退団者タイムで「夢が叶うって、素敵なことですね」と感極まってカタコトのようにつぶやく姿がかわいかったです。後日放送されたロビーでの挨拶では、髪飾りをリボンではなくブーケと同じ淡い青のお花に変えていたのが、また娘役らしくて素敵でした。

 

朝霧真さん

 男役らしく、まっすぐな挨拶だった朝霧さん。夢中になれるものに出会うのはそう簡単ではない…という言葉に、数回転職している私はもう頭を垂れるしかありませんでした。でも、だからこそ、私にはタカラジェンヌがみんな輝いて見えるのだな、とも思います(まぶしすぎて遠ざかってしまう時期もあるほどに)。

 また、どんな小さな役でも愛するのがポリシーだったというのも印象的でした。これは、本当に難しいことだと思うんです(自分の仕事で考えるとよくわかる)。でも、朝霧さんは本当にその覚悟をもって男役をしてきたのだなと思うと、再び頭が下がります。素敵な男役がひとり宝塚を去って、素敵な人をひとり私たちの社会は迎えるのだと、退団というものを何だか違う目で見られるようになった、朝霧さんの挨拶でした。

 

千海華蘭さん

 飄々とした挨拶が唯一無二だった千海さん。「月組のみんなと、よく考え、よく学び、よく笑った日々。あー楽しかった!」という言葉が本当に月組。ブーケも個性的で、最後まで個性あふれる月組を代表する男役さんなんだなと。

 私が千海さんを最初に知ったのは、昔映像で見た『Misty Station』の「魂のルフラン」ロケット。あの頃と風貌がほとんど変わっていないことに驚異を感じつつ、挨拶で観客と語り合うように自在に話す姿には、やっぱり百戦錬磨の役者さんなんだなと思いました。自分の挨拶は晴れやかだったのに、Forever Takarazukaや退団者タイムで下級生が話すときは泣いていたのも印象的でした。

 「千海華蘭物語」の最後の最後で、観客として参加させてもらえたことが、とても光栄です。

 

光月るうさん

 「るみこさーん」と呼ばれて返事をするその声まで男役を貫いた組長の光月さん。挨拶でも、大好きな男役を全うしたと言っていました。21年間、自分自身に向き合いながら常に目標に向けて走り続けた…と言い切れる姿には、もう尊敬しかありません。

 初めて宝塚を見たのは旧東京宝塚劇場の3階席だそうですが、私もそうでした。同じ場所で同じような時代に宝塚を見て、光月さんのように宝塚に入り、組長にまでなる人がいると思うと、宝塚は本当に、夢を叶える場所なんだなと。

 月城さん率いる愉快な月組をこれからもよろしくと託されたので、私はこれからも舞台を観にいこうと心に決めました。そして、映像でばかり見ていたここ数年の月組は、光月さんのいう「明るく強くたくましく」の月組だったんだなと、改めて思いました。

 

 皆さんの挨拶はどれも心に響き、気づかされることがたくさんありました。大好きで入った宝塚を、何らかのタイミングでやめていくことになるという厳しさも感じます。それでも、全方面への感謝を述べ、お客様からエネルギーをいただいた、夢を見させていただいた…と言って去っていく姿には、ただただありがとうございましたと言いたいです(元気をもらい、夢を見させてもらっているのは私の方です)。

 今回『応天の門』『Deep Sea』を観て、改めてまた劇場に行きたいと思いました。と同時に、よいファンであるとはどういうことだろう?とも考えるようになりました(思考がいちいち重くてすいません…)。というのは、たくさん観劇をする形での応援は私には難しいので。でも、これまでのようにスカステや配信だけでなく、もっと応援できないか、せめて受けた感動を言葉にするところから始めてみようかと思い、ブログを始めてみたわけです。ネットの片隅から愛を叫びつつ、日々エネルギーを燃やして舞台に邁進するジェンヌさんを、何とか応援していきたいと思います。

 元気玉のようにエネルギーを送れたらいいなと思いつつ、宝塚の次の人生を歩き始めた皆さんと、宝塚で歩み続ける皆さんに、元気で幸せな毎日を祈ります。