月ときなこと宝塚

宝塚は幸せの歌

客席降り復活で思い出す『華麗なる千拍子』と「幸福を売る人」

 星組『1789』で客席降りが復活するというニュースを読みました。少しずつ宝塚が元に戻ってきますね。

 私は客席降りを体験したことがないので、いつか見てみたいです。主に宝塚を見ていたのは1990年代なのですが、その頃はあまりなかったような。ジェンヌさんたちが自分の近くに来るって、どんな感じなんでしょう? いいないいな。

 客席降りのことを考えていて、1961年『華麗なる千拍子』の客席降りを思い出しました。といっても生まれる前の作品なので、以前スカイ・ステージの「宝塚アーカイブス」という番組で見ただけですが。でも、個人的にとても思い出深いシーンです。

 

 私は1990年代に宝塚をよく見ていて、その後2000年代は見なくなり(進学、就職、結婚など環境の変化や関心の変化のため)、2010年代になって再び主に映像で見るようになった感じの人です。

 私がファンに復帰?できたのは、宝塚専門チャンネルタカラヅカ・スカイ・ステージ」の存在がとても大きいです。ときどき無料放送なんかもやっていてたまに見ていたのですが、7年ほど前に加入しました。

 最初は、昔見た舞台の再放送を中心に見ていたのですが、徐々にその後の作品も見るようになりました。面白い作品がたくさんあったものの、やっぱり知らないジェンヌさんがほとんどになっていて、少し寂しいような、敷居が高いような感じがしていました。それに、何となく罪悪感のようなものがあり…。あんなに好きだったのに、10年以上も見なくなるなんて、もうファンの資格(なんてものはないはずなのですが…)がないんじゃないかとか感じていた気がします。

 

 そんなある日、ぼんやり見ていたスカステで流れたのが「宝塚アーカイブス」という番組でした。宝塚の歴史を映像でたどる番組で、とても見応えがありました。昔の映像なら罪悪感 (笑) なく見ることができたのですね。

 放送は#100「『華麗なる千拍子』~明石照子と寿美花代~<後編>」の回。映像は1961年雪組『華麗なる千拍子』で、白黒ですが音は十分にクリアでした。興味深く見ていると、寿美花代さんが「幸福を売る人」を歌い始めました。タカラヅカスペシャルなどでもよく歌われるあの明るい歌です。

「幸福を売る人」

悲しい時に 明るい歌を
涙の頬に 笑顔の歌を
淋しい心に 楽しいリズムを
苦しい人に 幸せの歌

(作詞:Jean Broussolle、作曲:Jean Pierre Calvet、訳詞:高木史朗)

 その瞬間、自分でもびっくりするくらい涙が出てきて止まらなくなりました。歌はその後パレードになり、不思議な八百屋舞台?からシャンシャンを持ったジェンヌさんたちが降りてきます(まだ大階段ではなかった)。そして歌いながらみんなで銀橋へ。

 ここは昔も今も同じなんだな~と思いながら見ていたら、歌が一瞬とまって、明石さんと寿美さんが「さあ皆さん、最後にもう一度『幸福を売る人』を皆さんとご一緒に歌いましょう」と呼びかけました(一部聞こえなかったので少し違うかもしれません)。そして、再び歌が始まると同時に、銀橋のジェンヌさんたちがみんな客席に降り始めました。お客さんに手を振ったり、シャンシャンから何か取り出して配ったり?、握手をしたり。劇場中の人がみんな楽しそう。それを見てまた大号泣 (笑)。

 たぶん、「おかえり」と手を差し伸べてもらったように感じたんだと思います。初めて見る白黒の『華麗なる千拍子』を見ながら、私は宝塚が大好きだと心の底から思いました。また宝塚のファンになれてうれしかった。

 

 それ以降なんだか気が楽になり、観劇にいくことはほとんどできなかったけれど、映像では好きなようにいろんな時代の作品や、リアルタイムのジェンヌさんが出る番組をいろいろ見るようになりました。本当にスカステさまさまです。

 今日、今も残してあるこの時の録画を久しぶりに見ました。また泣いた (笑)。改めて見ていて、明石照子さんも寿美花代さんも、歌い方が自由でカッコいい。歌詞に出てくる自由な詩人、ヴァガボンドみたい。そして「幸福を売る人」がとんでもなく名曲。あれ以来、この歌は私にとって宝塚そのものです。ブログのサブタイトルにまで言葉を借りてしまいました。

 元はシャンソンで宝塚オリジナルの曲ではありませんが、高木史朗さんの訳詞とあわせて本当にいい歌です。下のリンクは『タカラヅカスペシャル2017 ジュテーム・レビュー』のときの「幸福を売る人」です。本当に素晴らしい歌なので、(ご存じの方が多いかもしれませんが)良かったら聴いてください。 

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