月ときなこと宝塚

宝塚は幸せの歌

春野寿美礼さん・永久輝せあさんの「夢の音楽会」#7

 スカイ・ステージ「夢の音楽会」#7を見ました。

 現役の宝塚スターが憧れのOGさんと一緒に歌ったりトークしたりする「夢の音楽会」。第7回は花組の永久輝せあさんと元花組トップスター春野寿美礼さんです。以下、歌などネタバレになるかもしれないので、これまでのラインナップを挟みますね。どの回も素晴らしかった。

  • 夢の音楽会#1「安蘭けい・和希そら」
  • 夢の音楽会#2「柚希礼音・暁千星」
  • 夢の音楽会#3「彩乃かなみ風間柚乃
  • 夢の音楽会#4「姿月あさと・桜木みなと」
  • 夢の音楽会#5「特別編Ⅰ」(#1・#2の総集編)
  • 夢の音楽会#6「特別編Ⅱ」(#3・#4の総集編)← 感想
  • 夢の音楽会#7「春野寿美礼・永久輝せあ」

春野寿美礼さん

 春野寿美礼さんといえば、私にとって宝塚の帝王です(私だけじゃないと思うけども)。男役も何もかも超越して、「宝塚のトップスター」そのもののような存在。…といっても、個人的に2000年代は宝塚から離れていて、トップスター時代を見ることはできなかったのですが。その後スカステなどでまた宝塚を見るようになって、最初に好きになった「知らない時代のトップさん」が春野さんでした。

 『エリザベート』『マラケシュ・紅の墓標』『ファントム』『明智小五郎の事件簿-黒蜥蜴』などなど大好き。あと春野さんのコンサート『I GOT MUSIC』は、宝塚のコンサートというものを見たことがなかった私には、とても新鮮でとびきり面白かった。音楽が多彩で構成も秀逸、何より春野さんの声と存在感の華やかさ・大きさに圧倒されました。宝塚にも音楽にも、宇宙にも愛されているような、そんなスケールの大きさを感じます。

 TCAスペシャル2007『アロー! レビュー!』で春野さんが歌った『ファントム』の「Where in The World」をスカステで初めて聴いたとき、声が宇宙から響いてくるような気さえして、しばらく春野さんの歌声が一日中頭に鳴り響いている頃がありました。

 今回、春野さんのあの宇宙から降り注ぐような声をまた聴けて嬉しかったです。

永久輝せあさん

 昔、真彩希帆さんが大好きで雪組をよく見ていました。なので永久輝さんは今でも若手のイメージを感じてしまうのですが、今や押しも押されぬ花組のスターさんですね。

 個人的に雪組時代の永久輝さんといえば、『PR×PRince』の鋭い視線、『Music Revolution!』カノンの端正なダンス、『New Wave! -雪-』の(雪組最後の月城かなとさんと組んで)シャキシャキ踊る女役、そしていつも丁寧に歌う歌。何年か前にスカステで、出演作をご本人が振り返る番組があったのですが、その時の話しぶりから、なんとストイックな人だろうか!と驚いたのを今も覚えています。

 春野さんが言っていた『ドン・ジュアン』のラファエルは、私もすごく印象に残っています。独占欲の高じた少し怖い役。年末の全国ツアー公演『激情』もきっとすごくハマるのではないかと楽しみです。花組に行ってからはダンスにも歌にも磨きがかかって、役の幅も広がり(個人的に『元禄バロックロック』のクラノスケが好き)、もうすぐ始まる『鴛鴦歌合戦』のお殿様役はどんな感じになるんでしょうね。

デュエット

 今回お二人が歌ったのはこちらの2曲。

  • エリザベート』より「闇が広がる」
  • 『TAKARAZUKA舞夢!』より「世界の終わりの夜に」

 まさに夢を叶える選曲をありがとう!の気持ちです。すごく聴き応えがありました。

 

 「闇が広がる」はすごい緊張感。春野さんは、今は女性らしい柔らかい雰囲気なのに、歌声が強くて華やかで、やっぱりすごいな…と。永久輝さんもまっすぐで繊細で、すごくルドルフが似合いそう。と思っていたら、歌のあと春野さんが、ルドルフの心境と今の永久輝さんの心境がぴったり合ってるんじゃないか?と言っていた。

 このとき、私がパッと浮かんだのは「僕は今 不安で壊れそうだ」の歌詞だったのですが(私のルドルフのイメージ)、永久輝さんは「今こそ起ち上がる時」と言っていて、ああこれが今の永久輝さんなのか…とちょっと感動。頼もしい。

 「見過ごすのか 起ち上がれよ」の春野さんがゾクゾクする。そのときの永久輝さんの不安のような決意のような表情(カメラワークが確信犯)。そして春野さんの決定的な「王座に坐るんだ」で手を差し伸べるところ。お芝居とはまた違うドラマチックさがありました。楽曲を表現するというのは面白いなと。

 

 「世界の終わりの夜に」は、またとんでもなく難しそうな歌です。初めて『TAKARAZUKA舞夢!』(映像)で春野さんのこの歌を聴いたとき、あまりに神がかっていて(ゼウスの役だったけども)、もう心わしづかみ。聖と俗の祭典みたいなショーを見ていたら、宇宙規模の孤独が現れた…みたいな。

 春野さん言わく、この歌は音域が広く、出だしが低く、難しい。歌うときは、(演出の藤井大介さんによる)歌詞、YOSHIKIさんが作った音楽、きっとこだわった楽器の音色…そういうのを一つ一つ自分なりに噛みしめて大切に歌う…と。

 『TAKARAZUKA舞夢!』の頃の男役の低さとは違う、柔らかい女性の声のまま低い今の春野さんの歌声に感動しました。深い声。私にはやっぱり宇宙から響いてくるような気がする…。永久輝さんも、春野さんが褒めていたとおりしっかり声が出ていて、今回初めて付いたハモリ部分もとても美しかった。

 そういえば永久輝さんが、この歌は自分には難しいかなと思ったけれど、春野さんが歌うのを聴きたくて…という選曲理由が正直でかわいかったです笑。

 

 歌って、いろんな歌い方、伝え方があって面白いですね。春野さんの歌は、個人的にお芝居やドラマというより詩に近いイメージ。お芝居の歌も、一曲一曲が完成品のような。おまけに、仮に歌から歌詞を抜いても、同じ世界観を声・音だけで表せそうな表現力。歌詞に感情を乗せすぎない方が言葉が伝わってくるときがある…と改めて思わせられます。

 歌の終わり近く、「孤独にただ一人 ふるえて 叫ぶだけ」と歌っている永久輝さんを春野さんが見つめていて、もうなんだか地上の悩める人間を宇宙から神が包みこむような印象さえありました。永久輝さんのこれからを、私も応援しています。

 

 「夢の音楽会」、本当にいい番組ですね。永久輝さんが「次回もお楽しみに」と言っていた!ので、これからも続きそうなのが嬉しいです。いろんなジェンヌさんの「夢の音楽会」を見るのを楽しみにしています。

 第7回は、今月もう何回か放送があるので、まだの方はぜひ。

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